エンジニア派遣 電気設計/機械設計/システムエンジニアのスペシャリスト「図研テック」
EMC設計の案内人
第31回 出すのも受けるのも同じこと?
2018.05.29

こんにちは。図研テックの濱田です。

前回は静電気以外のイミュニティ試験について説明し、放射イミュニティへの対応として、電磁波を受けないように
するには電子機器内にアンテナをなるべく作らないことが大切という話をしました。
今回はそのために具体的にどういうことをすれば良いのかを考えてみましょう。

この連載の第5回で「金属を見たらアンテナと思え!」なんて書きました。
つまり、金属があればそれはもれなくアンテナになり得るわけです。
しかし、なるべくアンテナを作らないようにと言っても、金属の使われていない電子機器はありませんので
簡単にできることではありません。
ですから前回書いた通り「いかにアンテナを作らないか≒いかに効率の悪いアンテナを作るか」という風に
発想転換するわけです。
結局、電磁波を出す(エミッション)のも受ける(イミュニティ)のも、考え方は同じなのですね。

まず、放射電界イミュニティ試験への対応として、電界を受けにくいアンテナを考えてみましょう。
そのためには電界を受けやすいアンテナを考えて、そういう構造にならないようにすれば良いわけですね。
では、電界を受けやすいアンテナってどんなものでしょうか?
前回説明した通り、電磁波を出す方も受ける方も基本的な考え方は同じですので、
「電界を受けやすいアンテナ=電界を出しやすいアンテナ」と考えれば、思い浮かぶのは
ダイポールアンテナとスロットアンテナです。

ダイポールアンテナが一番受信効率が良くなる(共振する)のが、金属の長さが電磁波の波長の1/4になる時です。
特定の機器以外は通常は1GHzまでが試験の周波数の範囲となりますので、1GHzの電磁波の波長を考えると
30㎝、その1/4だと7.5㎝です。
小さい機器だと7.5㎝の金属はないかもしれませんが、ケーブルなどを考えると大抵はアンテナになるものが
ありそうな長さです。
ここで注意して欲しいことが2つあります。
1つは、基板やケーブルなど周りが空気になっていない金属上の電磁波は波長短縮という現象が起きますので、
実際にはもっと短い金属で共振するということです(波長短縮についてはまた別の機会にお話しします)。
もう1つは、波長の1/4でちょうど共振が起こるので最大の効率になるわけですが、それより短くても
少なからず電磁波を受信してしまうということです。
よって、完全に放射電界を遮断することはできないのですが、短ければ短いほど受信効率は落ちますので、
無用に長い金属を作らないということはまず大切です。

でも普通は必要がなければ、基板のパターンやケーブル、筐体寸法などわざわざ長くしないですよね。
ですから、短くするにも限度があって、あまり有効な対応にはならないかもしれません。
ということで、もう1つワザ(と言うほどでもないですが)があるのです。

この連載の第15回のダイポールアンテナの放射の様子を表した図を見ると分かりやすいと思うのですが、
電界はアンテナと平行な方向に放射されています。
逆に垂直な方向には放射されていませんね。
つまりこの方向からの電界は受信もしにくいわけです。
ということは、電界の飛んでくる方向になるべくアンテナの伸びている方向を向けると良いわけです。
「イミュニティ試験は360°の方向から電界を当てるからそんなことできないよ!」と思うかもしれませんが、
筐体の内部にある金属であれば、金属の途切れている部分や開口部のあるところから電磁波が
飛んでくる可能性が高いと考えることができます。

EMC31-1png.png
次にスロットアンテナの受信効率を下げる方法を考えてみたいと思います。
これはズバリ、開口部やスリットを作らないことです!
が、電子機器を隙間なく金属で覆ってしまうのはほぼ不可能ですよね。
でもやっぱり、無用な開口部を筐体に作るのは避けたいですし、筐体内部の基板やケースなどのスリットは
注意すればなくせると思いますのでできる範囲のことはしたいところです。
そして、スロットアンテナはダイポールアンテナと放射効率は同じですから、受信も同様です。
つまり、開口部やスリットは長い穴にならないように、必要な面積の分、小さな穴をたくさんあけて、
超高周波の電磁波しか通らないようにするということが有効です。
スロットアンテナも原理的には送信も受信も同様と考えられます。

EMC31-2png.png
ここまで色々説明してきましたが、結局のところ「送信も受信も同じ」でしたね。
つまり、「電磁波を出しにくいものは受けにくい」ということです。
出す方と受ける方の対策を別々に考えると話がややこしくなり、「イミュニティは難しい」ということに
なりますので、前回書いた通り、原理原則に戻って起きている現象をシンプルに捉えて考えていくことが
EMC設計では大切です。
イミュニティが難しいと感じるのは、電磁波が電子機器内に入った後、色んなところに伝わっていって
行き先を追いきれなくなり、思わぬところに影響が出てしまうからです。
ですから、まずはなるべく電子機器内に侵入させないことが第一なのです。

次回は放射磁界イミュニティ試験への対応を考えてみたいと思います。
想像がつくかもしれませんが、今回出てこなかった「もう1つのアンテナ」が登場します。

今回もお読みいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。


今回の記事はいかがでしたか
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