エンジニア派遣 電気設計/機械設計/システムエンジニアのスペシャリスト「図研テック」
EMC設計の案内人
第36回 EMC対策部品の使い方③
2018.10.30

こんにちは。
図研テックの濱田です。

この連載も第36回ということで丸3年も続いたことになります。
思うように筆が進まなかったり、出張続きで書く余裕がない時もありましたが、
読んでくださる皆さんがいらっしゃったからこそ続けてくることができました。
本当にいつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。

前回はEMC対策部品のコンデンサ(バイパスコンデンサ)について説明しました。
今回はEMC対策部品の中で「ノイズ成分を電気から熱に変換する」という役割を担う、
抵抗やフェライトビーズについて考えてみたいと思います。

電気のエネルギーの総量はエネルギー保存の法則により、忽然と増えたり減ったりしません。
電子機器では電気のエネルギーを光や音、力、熱などに変えることによって求められている機能を実現します。
つまり何かに変換されれば電気エネルギーは減るわけです。
電気のエネルギーが熱エネルギーに変換されれば、その分の電気のエネルギーも減ることになります。
電磁波は電流が流れるところから発生しますので、エネルギーの一部が熱として消費されることによって
電磁波の発生源である電流が減れば、外に出る電磁波ノイズも減る(可能性が高い)ということになります。

EMC36-1png.png
抵抗やフェライトビーズは意図的に電気エネルギーを熱エネルギーに変えるための部品ですが、
どうやって電気を熱に変換するのかを見てみましょう。

まずが電子部品としてはおなじみの抵抗器。
これをEMC対策に使えるのであれば、お気軽(値段が安く、種類も多く、入手もしやすい)ですよね。
プリント基板の配線などによく使われる銅は非常に抵抗値が低いため、電気を通しやすい物質です。
抵抗器は抵抗値の低い物質の中に抵抗値の高い物質を混ぜて作られています。
電荷が抵抗器の中を通る時に、抵抗値の高い物質に衝突することによって熱を発生するのです。
よって、抵抗器の中により抵抗値の高い物質が多く含まれていたら、つまり、抵抗値の高い抵抗器であれば
あるほど、より電荷の衝突回数が増えるのでエネルギーが熱に変換され、電流が減ります。
オームの法則V=RIから考えても、R(抵抗)とI(電流)は反比例の関係にありますので、V(電圧)が変わらない
のであれば、抵抗値が大きくなれば電流値が減るということが分かります。

単純に考えると「電磁波ノイズの出ている配線にすごく大きな抵抗値の抵抗を入れれば、電流もすごく
減るわけらからノイズ対策はバッチリね!」となるわけですが、そうはいきません。
配線に電流を流すのは、それが信号や電力を伝えるために必要だからですよね。
あまりに抵抗値の大きい抵抗を入れたら、回路が動かなくなってしまいますので本末転倒です。
また、熱に変換するということは発熱で電子機器に問題が出る可能性もあります。
抵抗器をノイズ対策に使う場合は回路動作と熱とノイズのバランスを考えて部品を選択することが必要です。

EMC36-2png.png

次にフェライトビーズについて考えてみましょう。
フェライトは強い磁性を持っている物質(簡単に言うと磁石にくっつきやすい物質)ですが、
そもそも「フェライト」って何でできているのでしょう?
私も改めて考えたことはなかったので、ネットで調べてみると、「酸化鉄を主成分とするセラミックスの
総称」と書いてありました。
そのフェライトに端子を付けて部品にしたものがフェライトビーズです。

フェライトビーズはコイルと同じ働きをします。
つまり、逆起電力によってノイズを反射させる性質を持ちます。
その辺のメカニズムについてはこの連載の第34回をご覧いただければと思うのですが、
コイルと違うのは「高周波では大きな抵抗器としての性質をあらわす」というところです。
ですから、フェライトビーズは「低周波ではコイルとしてノイズを反射し、高周波では抵抗器として
ノイズを熱に変換する」という働きをします。
しかも、コイルの時に問題になった「浮遊容量」が少ないという性質もあります。
とっても優秀!万能!

と、思うかもしれませんがもちろん注意しなければならない部分もあります。
高周波では抵抗器になるということは、抵抗器の注意事項同様、回路動作や発熱にも気を付けなければ
なりません。
しかも、周波数によってコイルの働きをしたり、抵抗器の働きをしたりするので、必要な周波数の成分を
減衰させてしまったり、信号波形の「形そのもの」が変わったりすることがあります。
ですから、どこの周波数のノイズを落としたいのか、部品の選択はよく考えてしなければなりません。
また、部品そのものの浮遊容量が少ないとしてもゼロではないですし、近くに他の導体があればそこに
浮遊容量ができてしまうので、配置や配線に気を付けないと思った通りに部品の性能が発揮できない時もあります。

EMC36-3png.png
ノイズ対策に抵抗やフェライトビーズを使う場合は、電気エネルギーを熱に変換しているため、
必ずエネルギーを無駄にしてしまう部分が出てしまいます。
電子機器設計でしゃ、まずはこれらの部品を使う前に設計の段階から、最小限の電気で動作させるという
考え方が大切です。
そうすることによって、電気の無駄遣いも減らせますし、ノイズや熱でも困らない製品設計につながります。
と、言葉で言うのは簡単ですが、そこが製品設計の難しいtころですよね。
しかし、お守りのようにこれらの部品をそこら中に付ける対策はなるべく少なくしたい...
そのために、原理原則をきちんと知って設計をするという「フロントローティング」の考え方が
必要になってくるのだと思います。

今回はEMC対策部品としての抵抗やフェライトビーズについての話をしました。
EMC対策部品はコモンモードフィルタなど他にも色々あるのですが、この連載でしゃこれくらいに
しておこうかと思います。
EMC対策部品については3階に渡って説明してきましたが、もっと詳しいことが知りたい方は、部品メーカーさん
のホームページなどに分かりやすい説明がたくさんありますので探してみてください。
次回は新しい話題に入ろうと思います。
どうぞお楽しみに!

今回もお読みいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。


今回の記事はいかがでしたか
ContactUs

ご相談・お問い合わせ

TEL045-478-0827受付時間 9:00~17:45(土日・祝祭日を除く)
Subscription

メールマガジン購読申込み

毎月、図研テックの活動や情報をみなさまにお届けします。

購読申込みはこちら

登録メールアドレスの変更はこちら

配信停止はこちら

ご相談お問い合わせ
pagetop