エンジニア派遣 電気設計/機械設計/システムエンジニアのスペシャリスト「図研テック」
EMC設計の案内人
第39回 EMC設計と熱設計とのトレードオフ②
2019.01.29

こんにちは。図研テックの濱田です。
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年も「EMC設計の案内人」をどうぞよろしくお願いいたします。

前回はEMC設計と熱設計のトレードオフの概要を私なりに丁寧に説明したつもりですが、いかがでしたか?
今回はEMC設計と熱設計の違いをまとめてみたいと思います。

1.「定性的」か?「定量的」か?
簡単に説明すると、「定性的」とは抽象的な表現、「定量的」とは数値を使った表現のことです。
具体的に例を挙げると、「この仕事はできるだけ早く終わらせます」というのが定性的、
「この仕事は今日の17時までに終わらせます」というのが定量的です。
定量的な方がよりはっきりしてて、言われる方としてもありがたいですよね。
しかし、EMCというのは定量的に言うことが非常に難しいものなのです。
「シールドをすれば〇dB下がる」とか「配線の長さを〇㎜にすれば、EMC規格に合格する」ということが言えないんですよね。
コンサルティングなどをやっているとお客様にそういう質問をされることがあるのですが、
結局は「測ってみないと分らない」としか言えないので私たちももどかしいところです。
電磁界シミュレータなどを使って定量化した結果が出たとしても、
測定した結果と合うとは限りません(理由は詳しく書くと長くなるので、別の機会に)。
ところが、放射エミッションなどの規格は「〇MHzは〇dBV/m以下」などとハッキリ線引きされています。
その規格をクリアするためには、できるだけ電磁波が出ない方法を地道に積み上げていくしかないわけです。

一方、熱の場合はEMCに比べると、ある程度定量化しやすいと言えると思います。
熱は伝搬ルートが分かりやすいので、きちんと計算をすれば「これをすれば〇度下がるだろう」という試算ができます。
そして、対策した時の効果が明確です。
EMCのように「良かれと思って対策したら、かえって悪化した」ということが起こりにくいのです。

でも、勘違いしないでください。
上記の様に言うと、「熱の方がEMCより簡単」と感じるかもしれませんが、そうではありません。
きちんと伝搬ルートが分かった上で計算をしなければなりませんので、誰にでもできるわけではありません。
また、熱は計算である程度温度が分かるかわりに、「これ以上温度が下がらない」という限界もわかります。
そうなった場合は、大きな設計変更が必要になってしまいます。
EMCの場合は(あまり推奨はできませんが)ある程度、力技で電磁波ノイズを落とすことが可能な場合もあります。
(だから後回しにしてしまいがちなのですが...)

EMC39-1png.png
2.設計の手順は?
もうこの連載の中で何度も繰り返し言っていますが、電磁波の発生源は電流です。
電磁波を外に出さないためには、いかにノイズ源に近いところで食い止めるかが勝負です。
電子機器の中で電流を使っているところは基板ですので、まずは「基板内部での電荷間のクーロン力を強くする」こと、
それで不充分なら、ケーブルや筐体などに伝わった電磁波を外に出さないようにすることを考えます。
つまり、「EMC設計は電子機器の内側から考え、そこで抑えきれない分を外側で考えていく」というのが基本です。

熱設計の場合はどうでしょうか?
電子機器の熱の発生源も電流ですので、基板上の部品などです。
しかし、EMCと同じように内側から考えていけば良いわけではありません。
熱設計では熱を外に逃がさなければなりませんので、EMCとは逆です。
熱をどのようにどれくらい逃がさなければいけないのかを考えるには、部品の温度がどれくらいになるか分からなければなりません。
熱設計では基準となるのは外気の温度です。
そこをスタートとして、筐体の温度→筐体内部の温度→部品の表面の温度→部品内部の温度を計算していきますので、
「熱設計では電子機器の外側から考え、内側の部品の温度が何度になるかを試算する」ということになります。

EMC39-2png.pngこのように、EMC設計と熱設計では大きく考え方が違うところがあります。
他にも違うところがたくさんあるのですが、ちょっと考えただけでもEMCと熱とのトレードオフは容易ではないように感じます。
でも、ここでも考え方をシンプルにしましょう。
電磁波は電荷がクーロン力によって外部の電荷と結合しようとして外へ出ていきます。
熱は電荷同士が衝突した際のエネルギーによって発生します。
よって、電子機器においては、電磁波も熱も発生源は電流ですので発生源が同じならば、
どこが通って良い場所か、どこが通ってはいけない場所なのかを見極められれば良い
と考えられます。
こう考えれば熱設計とEMC設計の両立ができそうな気がしてきませんか?

EMC39-3png.pngでは、具体的にEMC設計と熱設計を両立させるにはどうしたら良いのでしょうか?
それが簡単に分かれば誰も苦労することはないのですが、
次回はEMC設計、熱設計のそれぞれの具体的な手法から、共通項がないかどうかを考えてみたいと思います。

まだまだ寒い日が続いていますが、どうぞ皆様、体調を崩さないようにお過ごしください。
今回もお読みいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。

今回の記事はいかがでしたか
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