エンジニア派遣 電気設計/機械設計/システムエンジニアのスペシャリスト「図研テック」
EMC設計の案内人
第40回 EMC設計と熱設計とのトレードオフ③
2019.02.26

こんにちは。図研テックの濱田です。
まだまだ寒い日が続いていますが春ももうすぐですね。
今回もお仕事の合間の息抜きに「EMC設計の案内人」をどうぞよろしくお願いいたします。

EMC設計と熱設計のトレードオフについて今回で3回目となりますが、
前回はEMC設計と熱設計の違いについてまとめました。
今回はEMC設計と熱設計の手法から、何か共通することがないかを考えてみたいと思います。

EMC設計の手法
EMC設計の手法は今まで説明したもののまとめのようなものになります。
過去の連載も思い出しながら読んでいただければと思います。
①電流を少なくする
電磁波は電流源ですので、使う電流を少なくすれば当然電磁波は少なくなることが期待できます。
ただし、電子機器の性能を確保する上では電流値を下げることができない場合もあります。
②回路内でエネルギーを消化する
フィルタなどを使って、電気エネルギーを熱エネルギーに変える方法です。
エネルギー保存の法則により、
熱エネルギーに変換された分は電気エネルギーも減りますので電磁波も減る方向ということになります。
③回路(基板)内での結合を強くする
電子機器の外に電磁波が出ないようにするためには、まずは回路内に電磁波を閉じ込めておくことが重要です。
そのためには回路内の電荷同士の結合(ノーマルモード結合)をなるべく強くする必要があります。
何度も説明しましたが、電荷間のクーロン力は距離が近いほど強くなりますので、
電流が流れる導体は回路内のGNDなど電磁波が結合しても良い場所になるべく近づけます。
④回路(基板)内からの電磁波を結合させる安定したGNDを設ける
③のような対応をしても、回路内に全ての電磁波を閉じ込めておくことはできません。
つまり、コモンモード電流は発生してしまいます。
回路内で結合しきれなかった電磁波を外に出さないために、安定したGNDなどを設け、そこに電磁波を結合させます。

EMC40-1png.png
こうやって整理してみると、EMC設計の手法はとてもシンプルだということが分かると思います。
全て今まで説明してきたことですので、新しい技は何も出てきていません。
あとはこれら4つの手法をどう具体的に実現するかということです。
熱設計の場合はどうでしょうか?熱設計の手法もまとめてみましょう。

熱設計の手法
熱設計の手法については私は専門ではありませんので簡単な説明になりますが、
こちらも4つの手法しかないと言われています。
①表面積を大きくする
表面積を大きくすれば、放熱する面積も増えます。
②風速を上げる
熱い空気を吹き飛ばすことによって、温度を下げることができます。
③温度を下げたいものの位置を変える
電子機器内部は場所によって温度が異なります。
電子機器内の温度の低いところに、温度を下げたいものを移動します。
④消費電力を下げる
使う電力を少なくすれば電子機器全体の温度は下がります。
ただし、この手法は性能や機能を落とさざるを得なくなることもあるので、できない場合もあります。

EMC40-2png.png
熱設計の手法の方がEMC設計の手法よりも感覚的には分かりやすいかもしれませんね。
しかし、EMC設計の手法とは全然違いますね...。
一見、共通項はないように思えます。

では、それぞれのEMC設計の手法を設計した時に、熱はどうなるのかを考えてみましょう。
①電流を少なくする
回路内を流れる電流が少なくなれば、電力も減ります。
よって、これは熱設計にも効果がある手法と言えます。
しかし、先に説明した通り、この手法は電子機器の性能確保のため、できない場合もあると思います。
②回路内でエネルギーを消化する
これは電気のエネルギーを熱に変える手法ですので、
当然、回路内での発熱量は増えることになります。
ですから、「EMC対策のため」と言っていたるところにフィルタなどを追加するのは、
熱設計にとっては良くないということになりますので、トレードオフが必要な手法になります。
③回路(基板)内での結合を強くする
結合を強くするためには導体同士を近くしなければなりません。
そうすると、基板上のパターンや部品は近づくことになります。
発熱が多い部品に熱に弱いものが近づくと影響を受ける場合があります。
発熱が多い部品はノイズも多い傾向になりますので、
ここもEMCと熱のトレードオフが必要になります。
近づけるにしても、熱が逃げやすいように部品配置を工夫するなどすれば両立できる場合もありますので、
設計者間でのコミュニケーションも大切になってきます。
④回路(基板)内からの電磁波を結合させる安定したGNDを設ける
安定したGNDとは広くて、ビアなどを使ってさらに強固なGNDに接続して電位を安定させたGNDですので、
導体面積も広くなりますし、熱の伝導経路も増えますので、これは熱設計にも効果がある手法と言えます。

というわけで、まとめると現実的にEMCにも熱にも一番良さそうな手法は④と考えられます。
結局、EMC的にも熱的にも安定したGNDというのは大事なのですね。
そして、他の手法ももちろん使わないわけではないので、
トレードオフが必要な手法については、EMCと熱のどちらを優先させるかをよく考えて適用する必要があります。

EMC設計と熱設計のトレードオフといことで3回に渡って書いてきましたが、いかがでしたでしょうか?
次回はまた別の話題にしようかと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

今回の記事はいかがでしたか
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