ZUKEN TEC NEWS

最近の熱問題とその傾向(2)

本記事では、これまで100社以上の電子機器の設計開発における熱設計導入、熱問題の解決をご支援してきた図研テックの視点から「熱設計の重要性と対策」について解説します。

この記事の目次

本記事の執筆者:図研テック株式会社 上席技術監督 藤田 哲也(プロフィール

図研テックでは、「試作後の実験で許容温度を大幅に超過、すぐに使える新たな対策アイデアが欲しい」「熱設計の手順が決まっていないため、新規製品開発で熱問題が起こりがち」「熱問題発生時に相談できる上司や専門家が不在/多忙過ぎて実質“不在”」といったお客様に、熱対策の技術的な支援と、熱設計プロセスの構築・標準化を中心とした業務改革の支援を行っています。
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はじめに

前回は、近年多発しているリチウムイオン電池の熱問題について解説しました。

「熱設計の重要性と対策」の連載第4回目は、最近の熱問題とその傾向(2)と題して、電子部品の小型化と熱問題の関係について整理してみます。

電子機器の進化は、言うまでもなく電子部品の進化に支えられています。したがって、私たち設計者は進化した電子部品をどのように扱うか?という設計上の工夫を進化させる必要があります。熱設計は、進化させなくてはならない工夫の一つです。

電子部品の進化と熱設計の変遷をたどることで、どのように新しい熱問題に対処していけば良いか?について改めて考えてみたいと思います。

 

電子部品の変化

電源を供給して動作させる能動部品、電源を持たずに回路に挿入して利用する受動部品、電子部品は、どちらも時代とともに構造が変化してきました。

能動部品はトランジスタからIC、LSIへと高集積化し、機能別にCPUやFPGA・メモリといった制御系部品だけでなく、電力を使うパワーICなどにも利用されています。

抵抗・コンデンサ・コイルといった受動部品は基板が無い時代から使われていますが、時代のニーズに合わせて進化し、小型化するとともにバリエーションが増えてきました。

能動部品も受動部品も時代のニーズに合わせてスルーホール挿入部品から面実装部品へと変化し、その組み合わせによるHIC(ハイブリッドIC)やMCM(マルチチップモジュール)といったモジュール製品もありました。

現在は能動部品ではCPU系のチップレットや、メモリの3D実装が話題です。
受動部品は、一時期は積層セラミックコンデンサ(MLCC)の材料枯渇で、チップコンデンサだけでなくチップ抵抗なども大型部品が製造中止になったことが記憶に新しいですが、現在では復活しているようです。

 

電子部品の変化

熱設計問題の変化

このような電子部品の形状や構造の変化と共に、発熱量や許容温度も変化しており、それに対処するために熱設計も変化してきました。

振り返ってみると、最初の大きな熱設計問題の変化は、能動部品では、半導体が製品に使われはじめたことで許容温度が150℃程度に制限されたことと、ICやLSIのように高集積化されたことだったと思います。これらの変化によって、熱設計の難易度は一気に上昇しました。

次の大きな変化は、電子部品が面実装化・小型化されたことです。この変化によって、更に熱設計難易度が上昇しました。それでも電子部品が面実装化された当初は、熱設計対象は半導体部品が中心で、受動部品が対象となることは少なかったと記憶しています。

その当時の製品は筐体の内部空間が大きく、熱対策は空冷が中心で、電子部品の熱は筐体内部空気に放熱し、温まった内部空気を通風口から外に逃がす、という方法が多用されていたこともあり、今となっては比較的シンプルな熱設計だったと思います。

では現代はどうかというと、いまでも空冷製品はありますが、スマートウォッチなどに代表されるウェアラブル製品や、過酷な環境にさらされるECUなどの車載機器のように、小型・高密度かつ密閉された製品が増えています。

このような製品では電子部品の直接空冷は難しくなっており、熱設計の考え方が変化しています。部品が小型化することで表面積が減ることに加え、製品が密閉化することで空気の流れや対流が期待できないことから、部品から空気へ対流熱伝達による放熱が難しくなるため、熱対策は熱伝導に頼るようになっています。

 

熱設計問題の変化

また、基板に搭載された面実装部品は、基板が熱伝導による放熱先になります。しかし、基板は銅箔と絶縁体の積層材で、熱伝導率が低い絶縁体の断面積のほうが大きいため、一般的には良い伝熱材料とは言えません。

そのため基板の熱伝導率を大きくするため、銅箔層の層数や厚さを増やしたり、板厚方向の熱伝導率を大きくするためにサーマルビアを増やすなど、基板の熱伝導率を向上させる対策をするようになりました。そのほか、ビルドアップ基板のように、絶縁層にエポキシ樹脂だけでなく、様々な絶縁材料が使われるようになり、エポキシ樹脂より熱伝導率の大きな絶縁材料も使われています。

最近ではさらに、パワーモジュールなどには、SiC等の許容温度が高く、高発熱量の半導体が利用されたり、チップ抵抗はサイズはそのままに、許容電力が大きくなるといった変化も熱設計に大きな影響を与えています。

これら電子部品の高許容温度化、高消費電力化は、車載機器メーカ等の要求に対応したもので、放熱能力が高い基板や装置構造を採用することを前提としています。それを知らずに従来の使い方で大きな電力をかけると、基板が発煙・発火して重大事故につながる可能性があります。

したがって、現在では「熱設計の進化を前提とした電子部品を安全に利用するために、変化している熱設計手法を設計者にどう周知するか?」ということが大きな熱設計問題となっています。

 

新しい熱問題に対処するために

10年ほど前に「インダストリー4.0」という言葉がはやりましたが、産業革命の話をするまでもなく、産業と技術の発展は常に便利さとエネルギー問題のトレードオフになっていると思います。

現代でも、たとえば電灯がほぼ全てLED化されたことで電力消費は抑えられている一方で、生成AIの発展に伴う、データセンターによる急激な電力消費増大など、便利さとエネルギー消費のトレードオフが続いています。限りある資源を有効活用することは良いのですが、機能優先の技術進化の陰で、技術者は常に熱問題に苦労しています。

今回取り上げた発熱部品の小型化による放熱経路の変化も、機能だけを考えれば「高機能な小型部品の登場」という良い話なのですが、熱設計の立場から見ると「熱対策とコストを両立させるバランス設計の難易度がさらに増した」という印象です。

回路・構造・ソフトといった設計技術は常に進化しています。熱設計技術も同様で、時代の変化、ユーザーニーズの変化で常に変化・進化させる必要があります。自社製品のニーズに変化は無くても、電子部品の進化に対応する必要が出てきます。このため設計者にとって大事なことは、常に世の中の技術進化や変化に敏感でいることだと思います。そして進化した技術に興味を持ち、しくみを知ることが大事です。

幸いにも最近は(熱問題とトレードオフで)生成AIを気軽に使えるので、知りたいと思ったらAIに質問してみるのも面白いと思います。
試しに今すぐ「最近10年の熱設計技術の進化を教えて!」と質問してみてください。どんな回答が返ってきましたか?

 

まとめ

次回は「熱対策と熱設計」と題し、このような新しい熱問題に対処するため、改めて熱のフロントローディング設計の必要性を説明したいと思います。

 

 


この記事の執筆者

図研テック株式会社 上席技術監督 藤田 哲也

1981年 沖電気工業株式会社入社、消防・防衛・車載等の各種無線端末及び基地局、有線伝送装置の実装設計を担当。その後、基幹伝送装置・MPEG映像伝送装置などの伝送装置や端末装置の開発リーダーとして装置取りまとめに従事。2003年 株式会社ジィーサス(現、図研テック株式会社)に転職後は、実装技術支援サービスの立上を牽引し、デジタルカメラやテレビ、プロジェクター、カーナビゲーションシステムなど、さまざまな顧客の製品開発を支援。2014年 技術者教育サービス「熱設計講座」、熱設計コンサルティングを立ち上げ、2021年より現職。JEITA電子実装技術委員会 実装技術標準化専門委員会 サーマルマネジメント標準化グループ委員

著書

    • トコトンやさしい熱設計の本(日刊工業新聞社)
    • 電子機器の熱流体解析入門(日刊工業新聞社)
    • 最新熱設計手法と放熱対策技術(シーエムシー出版)
    • 高熱伝導樹脂の設計・開発(シーエムシー出版)

 

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