ZUKEN TEC NEWS

DC-DCコンバータにおけるノイズと基板レイアウト

これまで50社以上の電子機器の設計開発におけるEMC問題の解決をご支援してきた図研テックの視点で「パワーエレクトロニクスにおけるEMC実装設計」を連載テーマに、プリント基板(PCB)を中心に実装技術の要素を交えてEMC対策について解説します。

 

 

図研テックでは、「設計者によってEMC対策に対する考え方が異なるため、設計品質が安定しない」「開発テーマによって、EMC対策の効果の有無が変わるため、何から手を付ければ良いかわからない」「EMCに関する設計手順や基準が無いため、新規製品開発でEMC問題が起こりがち」といったお客様に、EMC対策の技術的な支援と、EMC設計プロセスの構築・標準化を中心とした業務改革の支援を行っています。→「設計・解析コンサルティング」サービス紹介ページ

 


 

はじめに

前回までは、パワーエレクトロニクス(以下、パワエレ)におけるノイズの原理・原則やノイズの伝わり方など、理論的を中心に解説してきました。
今回はその応用として、実際に実装設計をする際に、プリント基板上のDC-DCコンバータのレイアウトについて解説します。

特にノイズの発生要因となる高dv/dt箇所と高di/dt箇所に着目して、それらをどのように基板レイアウトに反映するか?について検討します。

 

DC-DCコンバータのノイズ源

パワエレにおけるノイズの要因はdv/dtとdi/dtが高い箇所です。
一般的な非絶縁降圧DC-DCコンバータにおいて高dv/dt、高di/dtとなる箇所は、それぞれ以下のように整理できます。

<高dv/dt箇所>

非絶縁降圧DC-DCコンバータの場合、ハイサイドスイッチのソース端子とローサイドスイッチのドレイン端子がつながっている箇所(=いわゆるスイッチングノード)が高dv/dt箇所です。

スイッチングノードでは、ハイサイド/ローサイドスイッチのON/OFFによって、電圧が常時0Vから入力電圧までの間で高速で切り替わります。その結果、高いdv/dtが発生し、出力部のコイル・コンデンサで電圧が平滑化されるまでその状態が続きます。

このスイッチングノード部が寄生・浮遊容量を介してコモンモード電流の経路となり、コモンモードノイズの主な発生源になります。また、このコモンモード電流の経路は、筐体・アース含めて複雑な経路になりやすく、EMI対策を難しくする要因の一つです。

そのため基板レイアウトでの対策は、スイッチングノードのパターン面積をできるだけ小さくすること、他の部品やパターンなどとの容量成分を減らすことが重要です。

<高di/dt箇所>

非絶縁降圧DC-DCコンバータの場合、入力コンデンサとハイサイド/ローサイドスイッチを接続するループが高di/dt箇所です。

この電源入力部のループが、スイッチングノードで発生する電圧変動に伴う電流変動が生じる高di/dt箇所です。(入力コンデンサで電荷を貯めこむことによって、入力コンデンサの外側ではdi/dtは緩やかになります。)

高いdi/dtは、その経路の寄生インダクタンスにより逆起電力が生じ、ノーマルモードノイズの要因となります。また、ここで発生したノイズが経路の途中でコモンモードにモード変換することで、ノイズの伝達経路を一層複雑にしていきます。

基板レイアウトでの対策は比較的シンプルで、高di/dtループの配線経路を短くすることで、経路上の寄生インダクタンスを小さくすることが重要です。

非絶縁降圧DC-DCコンバータにおける高dv/dt、高di/dt箇所

非絶縁降圧DC-DCコンバータにおける高dv/dt、高di/dt箇所

 

非絶縁降圧DC-DCコンバータ種類とノイズ発生源

非絶縁降圧DC-DCコンバータとして、一般的には以下の3種類があります。

  • 非同期整流スイッチ内蔵
  • 同期整流スイッチ内蔵
  • 同期整流スイッチ外付け

(非同期整流スイッチ外付けもありますが、あまり一般的でないので省きます)

スイッチ外付けの高dv/dt、高di/dt箇所は、「図:非絶縁降圧DC-DCコンバータにおける高dv/dt、高di/dt箇所」の通りですが、スイッチがDC-DCコンバータICに内蔵されている場合にはICの内部回路を理解する必要があります。
以下に、スイッチ内蔵の非同期/同期整流DC-DCコンバータにおける、高dv/dt、高di/dt箇所を説明します。

<非同期整流スイッチ内蔵DC-DCコンバータ>

スイッチ内蔵の非同期整流DC-DCコンバータの特徴として、ハイサイドスイッチのみがICが内蔵されていて、ローサイドはダイオードが接続されています。
ハイサイドスイッチだけが内蔵されているため、IC内部に入出力電源の負極(GND)の接続はありません。負極の接続は外付けのダイオードと入出力コンデンサのみです。

高dv/dt箇所は、IC内蔵のハイサイドスイッチ出力部(SW出力)と外付けのダイオードとコイルをT字状に接続する箇所が該当します。

高di/dt箇所は、入力コンデンサの正極とハイサイドスイッチ入力端子、外付けダイオードのアノード端子と入力コンデンサの負極へ接続する箇所です。

非同期整流スイッチ内蔵DC-DCコンバータ

非同期整流スイッチ内蔵DC-DCコンバータ

<同期整流スイッチ内蔵DC-DCコンバータ>

スイッチ内蔵の同期整流DC-DCコンバータは、ハイサイド/ローサイドスイッチの両方が内蔵されているため、非同期整流のものと比べると外部回路は単純です。
また、大電流経路となる電源負極(GND)は、非同期整流と異なりIC内部に存在します。

高dv/dt箇所は、DC-DCのスイッチング出力部と外付けのコイルとの接続部が該当します。高di/dt箇所は、入力コンデンサとDC-DCを接続する箇所です。

同期整流スイッチ内蔵DC-DCコンバータ

同期整流スイッチ内蔵DC-DCコンバータ

同じ非絶縁降圧のDC-DCコンバータであっても、DC-DCコンバータICの種類によって外付け部品の回路が異なるため、ノイズ源となる高dv/dt、高di/dt箇所は異なります。

続いて、これらの高dv/dt、高di/dt箇所を考慮した、DC-DCコンバータの基板レイアウトについて解説を進めます。

 

DC-DCコンバータの基板レイアウト

DC-DCコンバータの基板レイアウトについて、主なノイズ源となる高dv/dt、高di/dt箇所の処理を中心に解説します。

<レイアウトの基本>

  • 高dv/dt箇所であるスイッチングノード部は、配線を短くすることで、スイッチングノードのパターン面積をできるだけ小さくします。
    また、配線幅を広くするとパターン面積が大きくなり、容量成分が増えてコモンモード電流が流れやすくなってしまうため、必要最低限の配線幅を意識します。
  • 高di/dt箇所については、配線をできるだけ短くして、配線の寄生インダクタンスを小さくします。
    また、配線幅を広くしてもインダクタンスはほとんど変化しないため、配線長を短くすることを意識します。
  • DC-DCのコンバータの動作により、GNDにはdi/dtが高い大電流が流れることで、GND電位が揺れます(=GNDバウンス)。このGNDバウンスが他の回路のGNDへ伝達しないように、GNDを分離して一点接地を行います。
    また、この一点接地により、DC-DCコンバータ回路外に流れるコモンモード電流の回り込みを防ぐことが可能です。
  • 一点接地する箇所は、DC-DCコンバータ回路の中で比較的GND電位が安定している出力コンデンサのGND端子付近が望ましいです。
    DC-DCコンバータ制御のためのフィードバック回路は、一般的に出力部に存在するため、この回路のアナログGNDとの分離をするレイアウトが容易になります。

上記のような対策は、DC-DCコンバータのデータシートにレイアウトの注意事項として記載されていることが多いと思います。理由を理解しておくと、基板レイアウトの検討に反映しやすくなりますので、本記事がお役に立てれば幸いです。

では、実際の適用例として、非同期整流の非絶縁降圧DC-DCコンバータのレイアウトを見てみましょう。

非同期整流の非絶縁降圧DC-DCコンバータのレイアウト

非同期整流の非絶縁降圧DC-DCコンバータのレイアウト

前述のレイアウトの基本を理解していれば、実際に実装設計を進める上での基板レイアウトはそれほど複雑ではありません。ただし、DC-DCコンバータで使用される外付け部品は、ロジック回路で使用されるものより大きく、理想通りのレイアウトができないこともあります。その場合はノイズの発生要因を理解しておくことで、理想通りにできないことの影響まで総合的に考えて、ノイズ対策を考慮した基板レイアウトを進めることができます。

 

まとめ

本記事では、比較的、回路構成がシンプルな非絶縁降圧のDC-DCコンバータについて解説しました。ノイズの発生要因を理解しておくことで、基板レイアウトで悩むことは少なくなるはずです。

次回は、絶縁DC-DCコンバータの基板レイアウトについて、種別毎に解説する予定です。

 

 


この記事の執筆者

図研テック株式会社 技術監督 古瀬 利之
iNARTE EMC Master Design Engineer (Certificate No.EMCD-00243-ME)

1999年株式会社図研プロセスデザイン研究所(現、図研テック株式会社)に入社。
EMC設計・対策、高速半導体用インターポーザ、携帯電話用PCBを中心に電気設計業務を担当。
2014年よりEMC設計支援サービスやEMC設計教育サービスを立ち上げ、2021年より現職。

    • KEC関西電子工業振興センター
      iNARTE EMC設計技術者資格試験問題作成部会委員(2016-2018)
    • KEC関西電子工業振興センター主催 設計者向けEMC技術講座
      「EMC設計におけるフロントローディングとデザインレビュー」
      講師(2016-2019)
    • 環境電磁工学研究会(EMCJ)主催
      第14回 EMC基礎ワークショップ 講師(2018)
    • ポリテクセンター中部主催
      ディジタル回路のEMC実践技術講座 講師(2021-)
    • 第31回エレクトロニクス実装学会春季講演大会
      講演大会優秀賞受賞
      受賞講演「部品内蔵基板設計におけるCAE活用と、テスト容易化設計技術の展望」

 

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