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絶縁型DC-DCコンバータにおけるノイズと基板レイアウト(前編)

これまで50社以上の電子機器の設計開発におけるEMC問題の解決をご支援してきた図研テックの視点で「パワーエレクトロニクスにおけるEMC実装設計」を連載テーマに、プリント基板(PCB)を中心に実装技術の要素を交えてEMC対策について解説します。

 

この記事の目次

本記事の執筆者:図研テック株式会社 技術監督 古瀬 利之(プロフィール

 

図研テックでは、「設計者によってEMC対策に対する考え方が異なるため、設計品質が安定しない」「開発テーマによって、EMC対策の効果の有無が変わるため、何から手を付ければ良いかわからない」「EMCに関する設計手順や基準が無いため、新規製品開発でEMC問題が起こりがち」といったお客様に、EMC対策の技術的な支援と、EMC設計プロセスの構築・標準化を中心とした業務改革の支援を行っています。→「設計・解析コンサルティング」サービス紹介ページ

 


 

はじめに

前回は、非絶縁降圧DC-DCコンバータのレイアウトについて解説しました。

今回は、絶縁型のDC-DCコンバータのレイアウトについて解説を進めていくことが自然な流れですが、絶縁型コンバータは種類が多く、構成も複雑なため、どのような解説記事にしたものか?と思案しました。

そこで、今回の前編では回路の概要・特徴とノイズ源となる高dv/dt、高di/dtの把握を、次回の後編でレイアウトやノイズ対策について、前後編に分けて解説します。

少々、長い解説になってしまいますが、引き続きお付き合いください。

 

絶縁型DC-DCコンバータの概要

解説を始めるにあたって、DC-DCコンバータの絶縁型と非絶縁型の共通点と相違点をおさらいします。

  • 共通点
    原理的に、スイッチング素子のON/OFFによって磁気部品にエネルギーを蓄積・放出することで電圧変換を行うこと。
  • 相違点
    トランスを用いて入力と出力を絶縁していること。(トランス以外の部品を使用して絶縁する方法もありますが、一般的ではないので、本記事では割愛します。)

以下のようなイメージです。(図1 クリックして拡大)

図1:絶縁型/非絶縁型DC-DCコンバータの違い

図1:絶縁型/非絶縁型DC-DCコンバータの違い

図1の絶縁型DC-DCコンバータはフライバックコンバータという種類のものです。絶縁型DC-DCコンバータの中では、シンプルな回路構成で、小電力用途としてスマートフォンの充電器などによく使われています。

フライバックコンバータをはじめとする絶縁型のDC-DCコンバータの方式と特徴を整理すると以下の通りです。主に取り扱う電力容量の違いによって用途が分かれますが、EMC的にもそれぞれに特徴があります。(表1)

表1:絶縁型DC-DCコンバータの種類

 

絶縁型DC-DCコンバータのEMC的特徴

絶縁型DC-DCコンバータのEMC的特徴を詳しく知るために、前回解説した非絶縁型DC-DCコンバータと絶縁型DC-DCコンバータのEMC的特徴の比較を見ていきます。(表2)

表2:絶縁/非絶縁型DC-DCコンバータのEMC的特徴の違い

表2:絶縁/非絶縁型DC-DCコンバータのEMC的特徴の違い

表2のとおり、最も大きな違いは非絶縁型DC-DCコンバータは高di/dtによるノーマルモードノイズがEMC問題の中心であることに対して、絶縁型DC-DCコンバータは絶縁間容量によるコモンモードノイズが問題の中心です。

第4回第5回の記事でも解説した通り、コモンモードノイズの特徴は、ノイズの要因となるコモンモード電流の経路把握が難しいことです。絶縁型DC-DCコンバータも同様に、意図しないコモンモード電流の経路が問題になるケースが多く、ノイズ対策を難しくしています。

 

絶縁型DC-DCコンバータのノイズ発生要因

次に、絶縁型DC-DCコンバータで最もシンプルなフライバックコンバータと、反対に最も複雑なフルブリッジコンバータを例にして、ノイズ発生要因の違いを見ていきます。

非絶縁型DC-DCコンバータと同様に、絶縁型DC-DCコンバータについてもdi/dtとdv/dtが高い箇所がノイズの要因です。そこで、フライバックコンバータ、フルブリッジコンバータ両者の当該箇所について掘り下げてみます。

<フライバックコンバータ>

図2:フライバックコンバータの高dv/dt・di/dt箇所

図2:フライバックコンバータの高dv/dt・di/dt箇所

  • フライバックコンバータの動作の特徴は、絶縁トランスの一次と二次を逆巻きにすることで、出力側のインダクタが不要であることです。それにより回路が単純化されています。
    回路は単純化されていても、一次側のスイッチングにより発生する高dv/dt電圧と高di/dt電流が二次側へ伝わりノイズの要因となってしまうことが、絶縁型DC-DCコンバータ共通の問題です。
  • 高dv/dt箇所は、一次側はいわゆるスイッチングノードと呼ばれるトランスとスイッチング素子が接続されている箇所です。この箇所の電圧変動がトランスにより二次側へ伝わることが、コモンモードノイズの要因です。
  • 二次側の高dv/dt箇所は、トランスとダイオードが接続されている箇所です。トランスの漏れインダクタンスや巻線間容量、ダイオードの接合容量などにより、一次側よりdv/dtが低くなります。
    昇圧などによってトランスの巻線比が二次側の方が大きい場合、それに伴ってdv/dtも高くなるため、注意が必要です。
  • 一次側の高di/dt箇所は、非絶縁降圧DC-DCコンバータと同様に入力コンデンサとスイッチング素子のループ部です。
    非絶縁型DC-DCコンバータと異なり、ループの中にトランスが存在するため、磁化/漏れインダクタンスにより、トランスに接続している箇所は僅かにdi/dtが低くなります。
  • 二次側の高di/dt箇所は、トランス-ダイオード-出力コンデンサのループです。二次側は非絶縁型と異なり、出力コンデンサにも高di/dtの電流が流れます。
    絶縁型DC-DCコンバータの二次側はトランスの磁化インダクタンスや整流ダイオードなどの影響などにより一次側よりdi/dtは低くなります。

 

<フルブリッジコンバータ>

図3:フルブリッジコンバータの高dv/dt・di/dt箇所

図3:フルブリッジコンバータの高dv/dt・di/dt箇所

  • フルブリッジコンバータは、絶縁トランス、入出力コンデンサ以外に、一次側にスイッチング素子4つ、二次側にダイオード2つとインダクタとフライバックコンバータ(スイッチング素子、ダイオード1つずつ、インダクタ不要)に比べて、部品点数が非常に多く、複雑な回路なのが特徴です。
    回路は複雑ですが、動作そのものは他の絶縁型DC-DCコンバータと同様に、一次側の電圧変動をトランスで二次側へ伝えることは共通しています。
  • フルブリッジコンバータの一次側の高dv/dt箇所は、フライバックコンバータと同様にスイッチ素子とトランスを接続する箇所です。両者の違いは、フルブリッジコンバータではスイッチ素子がフライバックコンバータの1つから4つに増えるため、駆動回路や配線構成、高dv/dtノードの取り扱いが増え、レイアウト設計が複雑になることです。
    スイッチの数は増えていますが、問題の高dv/dt箇所はフライバックコンバータと同様にスイッチ素子-トランス間であるため、考え方は共通です。
  • 二次側についても一次側と同様に回路が複雑ですが、フライバックコンバータと同様にトランスとダイオードアノード間のdv/dtが最も高く、次いでカソードとインダクタ間です。
    一次側の巻線比が二次側の巻線比よりも大きい場合は、一次側のdv/dtが高くなり、反対に二次側の巻線比が一次側の巻線比よりも大きい場合は、二次側に高圧の電圧が発生するため、二次側のdv/dtが高くなるケースがあることに注意が必要です。
  • 高di/dt箇所についてもフライバックコンデンサと同様に、一次側の入力コンデンサとスイッチング素子が接続されている箇所が最もdi/dtが高く、次いでスイッチング素子とトランスの接続部です。
    二次側は、フライバックコンバータには存在しないインダクタがあるため、その磁化/消磁に伴う電流により、di/dtは大幅に低くなります。

 

まとめ

今回は絶縁型DC-DCコンバータの種類・特徴とノイズ源となる高dv/dtと高di/dt箇所の解説を行いました。

回路動作を理解することで、記事では触れていないフォワードコンバータとハーフブリッジコンバータについても高dv/dt、di/dt箇所を把握することができます。

次回後編は、今回解説したフライバックコンバータとフルブリッジコンバータのレイアウトについて、実際の部品構造、放熱構造なども含めた実装設計の観点でポイントを解説すします。

 

 


この記事の執筆者

図研テック株式会社 技術監督 古瀬 利之
iNARTE EMC Master Design Engineer (Certificate No.EMCD-00243-ME)

1999年株式会社図研プロセスデザイン研究所(現、図研テック株式会社)に入社。
EMC設計・対策、高速半導体用インターポーザ、携帯電話用PCBを中心に電気設計業務を担当。
2014年よりEMC設計支援サービスやEMC設計教育サービスを立ち上げ、2021年より現職。

    • KEC関西電子工業振興センター
      iNARTE EMC設計技術者資格試験問題作成部会委員(2016-2018)
    • KEC関西電子工業振興センター主催 設計者向けEMC技術講座
      「EMC設計におけるフロントローディングとデザインレビュー」
      講師(2016-2019)
    • 環境電磁工学研究会(EMCJ)主催
      第14回 EMC基礎ワークショップ 講師(2018)
    • ポリテクセンター中部主催
      ディジタル回路のEMC実践技術講座 講師(2021-)
    • 第31回エレクトロニクス実装学会春季講演大会
      講演大会優秀賞受賞
      受賞講演「部品内蔵基板設計におけるCAE活用と、テスト容易化設計技術の展望」

 

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