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電子部品データベースの整備をお勧めする理由

前回の”先手必勝!電子部品のEOL情報調査”では、電子部品のEOL問題の対策として、EOLやカタログ落ちの情報をタイムリーに把握することの重要性について解説しました。

今回は、電子部品情報を現場の回路設計やEOL対策に活かすために不可欠な電子部品データベースに登録されている「部品情報整備」について解説します。

電子部品データベースの「部品情報整備」とは?

社内の電子部品データベースに分類や型番は登録されているが、電子部品の電気特性やサイズなどのスペック情報は納入仕様書や部品メーカーのデータシートを参照しないと分からないとなると、設計者が1つの部品を選定するために膨大な時間が必要になってしまいます。

これは極端な例かも知れませんが、「部品情報整備」とは、その時々の目的に応じて、電子部品のスペック情報を用いて電子部品データベースを検索することで、必要な部品を探すことができる/選定することができる状態に、電子部品データベースを整備することです。

「部品情報整備」とは

なぜ「部品情報整備」が重要なのか?

プリント基板を成果物とする電気回路設計は、構成要素を自社で設計するメカ設計とは違って、部品メーカーから供給される半導体・電子部品を組み合わせて要求仕様を実現するという特徴があります。

回路を構成する電子部品の選定が成果物であるプリント基板の機能、品質、コスト、納期に直結するため、電気回路設計では「電子部品を探す/選ぶ」ことが非常に重要な要素の一つです。「電子部品を探す/選ぶ」業務を円滑に進めるために、登録情報が整備された電子部品データベースが不可欠です。

設計者は部品の性能、サイズ、信頼性、コスト、供給状態など様々な点を考慮して部品を選定しますが、電子部品データベースからスペック情報に基づいて、過去に使用実績のある部品を検索し、選定することができれば、電子部品を選定するための工数を最小にできるだけではなく、似て非なる部品の採用を抑制し、部品の標準化や管理コストの低減にも繋がります。

また、回路設計段階でCADの様々な電気的チェック機能やシミュレーションを活用し、部品表やディレーティング表を自動的に出力することができれば、設計効率は大幅に向上します。

このように、部品選定や回路CADによる設計効率化を図るためには、それを支える電子部品データベースの登録情報の整備が重要です。

「部品情報整備」の課題とポイント

部品登録基準が曖昧、部品情報登録チェックプロセスの不在、登録者毎の基準バラツキ、事業統合による基準の矛盾など、理由は様々あると思いますが、以下のような問題点を克服する必要があります。

  • 同一の部品が異なるコードで登録されている
  • 電気特性やサイズなどスペック情報に歯抜けや登録ミスがある
  • 部品分類の登録(選択)に誤りがある

電子部品データベースの登録情報が整備されることで、候補部品の絞り込みを高い精度で実現し、部品を探す手間を省き、設計者にとって重要な検討に多くの時間を使うことができるようになります。

また、部品選定以外にも、電子部品データベースの情報をCAD側でも使用する(連携させる)ことで、CADの持つDRCや検証機能を活用し、回路設計業務を効率化することができます。

もちろん、ベテランの設計者であれば、電子部品データベースが不完全な状態であっても、豊富な経験や知識を用いて、散在する情報をうまく組み合わせて最適な部品選定ができるかも知れません。しかしながら、そのような経験に裏打ちされたノウハウの伝授はなかなか難しいものです。

つまり、部品情報整備のポイントは、だれでも・いつでも・高精度で使える電子部品データベースを構築するために、設計者目線で必須な部品分類と部品属性を定義し、今ある電子部品データベースの登録情報を“正しい情報・使える情報”に整備することです。

EOL情報を活用するための部品情報整備

前回の”先手必勝!電子部品のEOL情報調査”では電子部品EOLの情報をタイムリーに入手することが重要と解説しましたが、入手するだけではなく、タイムリーに活用できなければ意味がありません。

例えば、新規に回路設計を行う場合であっても、実績のある回路を流用することが多いと思います。採用した流用回路にEOLとなった電子部品が含まれていると、代わりになる部品を探し出し、回路全体の検証やチューニングをした上で、設計を進める必要があります。

部品変更が必要な場合、様々な課題や検討事項が発生します。

  • 代わりになる電子部品はEOLになってしまった部品と全く同じスペックではない
  • 全体回路または部分回路単位での検証や動作測定が必要

交換前後の電子部品のスペックの違いをいかに早く正しく把握し、代わりになる最適な電子部品を選定して設計変更へと進めていく、つまり電子部品データベースを常に“正しい情報・使える情報”に整備しておくことが重要です。

また、個々の設計者は自身の担当製品に関わりの無い部品のEOL情報について、メール等で社内連絡があったとしても、ついつい見落としてしまうこともあるのでは無いでしょうか?

設計者にEOLステータスを周知するためには、

  • EOL部品が自身の製品に使われているか?
  • これから使いたい部品がEOLとなっていないか?(または近い将来EOLとなりそうか?)

をPLMシステムやCADで簡単に検索できる仕組みを構築することも重要です。

しかしながら、検索結果を確実な情報と信じるためには電子部品データベースの整備が不可欠です。繰り返しになってしまいますが、弊社でご支援している実績や、お寄せいただくご相談・ご質問から推察すると、多くのメーカーで検索の基礎となる電子部品データベースが、理想どおりには整備されていない(整備し続けられていない)のが実情ではないか、と考えています。

「部品情報整備」に必要な取り組みとは?

電子部品データベースを“正しく”構築・運用するためには、以下のような取り組みが不可欠です。

  • 電子部品データベースの登録ルールを整備し、ルールに基づく登録作業を徹底する。
  • 登録作業担当者のミス・エラー等をチェック、修正する業務プロセスを確立する。
  • 電子部品データベースの管理を担当する部門を決める。
  • 電子部品データベースは必ず1つに統一する。
    (事業統合等の事情があっても、1つの組織で複数の電子部品データベースを運用する状態は望ましくない)

こういった取り組みは、一朝一夕で実現できるものではありません。具体的には、電子部品データベースの整備は以下のようなステップで進めます。

 STEP1 部品分類、各属性の登録ルールなどの基準を作成

 STEP2 既存の電子部品データベースのクレンジング

 STEP3 EOLステータスと代替品候補を電子部品データベースへ付与

 STEP4 部品検索・選定システムの構築

 STEP5 新規部品登録プロセスの決定と登録ルールの周知

これらのステップを通じた電子部品データベースの整備は、誰でも容易にできる訳ではありません。登録ルールを決めるためには電子部品に関する知識と電子部品データベースを活用するCAD/ITの知識両面が必要となります。また、利用する設計者の視点も欠かせません。更にはクレンジングを行う作業者には部品メーカー毎に異なるデータシートを正確に読み取れるスキルが求められます。日々多忙な設計者は本業が手一杯で、管理業務であるデータベース整備に時間を割くことが難しいといった場面は多いのではないでしょうか?

まとめ

昨年来のコロナ禍により業務形態が変化し、設計業務においてもリモートワーク時の設計・検討、Web会議など、PCを起点とした業務が増えていることと思います。

企業の持つの膨大な情報が自社のサーバーにすべて格納されていれば、業務に必要な情報の入手に不自由を感じることはありませんが、情報というものは、得てしてローカルのPCや紙媒体にも散在してしまうものです。従来は「(有識者に)ちょっと一声かける」「キャビネットを開いてファイルを見る」だけで入手できていた情報も、現下の状況では容易には入手できません。

このような時だからこそ、あらためて電気設計を支える電子部品データベースの整備を検討してみてはいかがでしょうか?

図研テックでは、CAD/ITの知識は勿論、豊富な製品設計経験や登録基準設計のノウハウで、お客様毎に基準設計からデータ整備まで、最適な電子部品データベース構築をご支援しています。
電子部品データベースの構築に関する幅広いサービスをご提供できますので、ご興味のある方は以下のURLから是非サービス資料をダウンロードしてご覧ください。

図研テックでは、経験豊富なエンジニアが電子部品に関する様々なサービスを通じて、多くのお客様の安定的なものづくりをご支援しています。

今回解説した電子部品データベースの整備に向けた5つのステップにご興味やご関心を持っていただけた方、ご質問がある方は、下記のフォームよりお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ内容と回答方法のご希望に応じて、メールやオンライン・オフラインミーティングで回答いたします。

 

次回は、電子部品データベースを整備することによるメリットや実現できることなど、『部品の標準化』の観点から解説します。
ご期待ください。ご一読いただき、ありがとうございました。

 


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