先手必勝!電子部品のEOL情報調査
2021.12.10
今回は、電子部品のEOL問題(電子部品の生産中止問題)がテーマです。
本稿をご覧の方には、改めてお伝えするまでも無く、電子部品のEOL自体は“当然、起こること”ですが、2021年現在、電子部品のEOLの何が“問題”となるのか?1997年の創業以来、電気CADの部品ライブラリ・部品DBのメンテナンスや運用をご支援している図研テックの視点でご紹介します。
電子部品のEOL問題とは
本稿で取り上げる電子部品のEOL問題とは、セットメーカーの視点で、電子部品が寿命を迎え、生産中止(End Of Life)となることで発生する製品の設計変更や関連業務にまつわる問題の総称です。
- 電子部品のEOLが予見できていない
- 自社の生産計画と部品メーカーからの情報開示のタイミングが不一致
- 取引量が少ない等の理由によりタイムリーに情報が入手できていない
- 電子部品のEOL情報が社内共有できていない
- 一元管理できていない
- 代替品の採用による設計変更が本来の設計業務を圧迫してしまう
- 部品採用時のEOL情報の確認不足、情報不足(=一元管理できていない)
電子部品のEOLに伴う従来製品の顧客対応、設計変更や、新製品開発などの業務は、セットメーカーで購買・設計・品質管理・製造・サービスに携わる方にとっては、通常業務の一環でもあると思います。しかしながら、どんな仕事でも緊急対応は避けたいものです。EOLの予見性向上や情報管理、非生産的な設計工数削減の解決に関心のある方も多いのでは無いでしょうか。
電子部品のEOL問題が起こる理由とトレンド
電子部品も製品である以上、電子部品のEOLは必ず起こることではありますが、昨今の電子部品のEOLは、
- 採算性が悪い部品の販売終了
- 部品の小型化など、テクノロジーが進んだことによる旧部品の淘汰
- 部品メーカーの合併・事業売却
これらの理由から、これまで以上に早く(ライフサイクルが短く)・多く(多くの品番が)EOLとなっています。
ここ10年は、特に採算性の一層シビアな判断や、製品ラインナップ・テクノロジー全体での生産中止判断をする傾向が進み、半導体部品をはじめ電子部品のEOLは増加の一途をたどっています。
パナソニックの半導体事業売却、Analog DevicesによるMaxim Integrated Productsの買収予定、AMDによるXilinxの買収予定などのニュースは記憶に新しく、部品メーカーの合併・事業売却によるEOLも加速していくことが予想されます。
このような背景のなか、最近の半導体市場は、自動車・産業機械分野の復調や、新型コロナウイルスの感染拡大による働き方の変化からPC、空調、ネットワーク機器、データセンターの半導体需要が拡大しています。
その反面、半導体生産工場の火災、水不足、寒波による停電トラブル、中国の禁輸措置などによる半導体生産量の減少により、特に半導体不足がひっ迫している状況の中、電子部品を多く扱う製造業の方にとって、電子部品EOLの問題は深刻な状況ではないでしょうか。
昨年『EOL調査サービス』を通じて弊社で調査した部品を例にとっても、全体の約15%が調査開始時点でEOLとなっていました。また、それらの「お客様が気づかないうちにEOLとなっていた部品」の内訳は、ダイオード(24.2%)、IC(20.6%)、抵抗(15.4%)というように、部品種別による多寡はなく、半導体に限らず、あらゆる部品のEOLが加速しているものと推察しています。
電子部品EOL対策のポイント
電子部品のEOLが突然発覚した場合、EOL部品の代替となる部品を探し、それが製品として、正しく動作するかを検証し、必要量の部品を確保し、生産するといったことを、購買、設計、品質管理、製造の各部門・担当者が緊急対応をすることになります。
もちろん、短期で行わなければ市場への機会損失、競合に遅れをとるなど、経営的なロスに直結してしまいます。
また、EOL部品が最終購買という形で調達できたとしても、適正量の買付をする余裕もなく、結果的に不良在庫となってしまうこともあります。
このような緊急対応の負担や苦労があって、何とか窮地を乗り切ったご経験のある方もさぞかし多いと思います。
では、EOL部品に対する対策はどうすれよいのでしょうか?
ライフサイクルの長い製品を継続的に生産するためには、電子部品の安定確保が欠かせません。
EOL対策のポイントは、
- 開発/設計段階で既にEOLとなっている部品または近い将来EOLとなりそうな部品を採用しない
- 災害等の突発的な部品供給難に備えて、代替可能な部品を準備しておく
- 近い将来EOLとなりそうな部品の予測情報を入手し、他社に先駆けて必要な部品数を確保する
など、電子部品のEOLやライフサイクルの予測、代替部品に関する情報の網羅性を上げ、一元管理することです。
これらを実現する上でも部品市場のトレンドや部品動向をタイムリーに把握し、そこから分析や対応をしっかり進めていくことが重要になります。
“カタログ落ち情報”の有用性
さて、ここまで読み進めていただいた皆様、自社で使用している電子部品情報の管理方法や網羅性に、課題を感じることはありませんか?
取引量の多い部品は、その部品供給やサプライヤとの情報交換がうまくいっているが、取引量が少ない部品に対しては、実際には部品動向の情報は皆無で、部品市場のトレンドや部品動向の情報収集や分析もあまりできていないものですよね。
弊社が提供している『EOL調査サービス』でお客様が管理されている部品データベースを調査すると、お客様が電子部品生産中と認識している部品情報に対し、既にEOLもしくは近い将来EOLになる可能性が高い部品が、おおよそ10~20%含まれています。
これらの部品が市場投入する製品に含まれ、EOLであることが発覚すると、緊急対応のループに入ってしまいます。
では、部品のライフサイクル動向をどう把握し、EOLを察知すればよいのでしょうか。
下図は、一般的な電子部品のライフサイクルを図示したものです。
生産開始された部品は、ある程度の生産を繰り返し、需要と供給のバランスの中、一定期間の市場投入がされますが、必ずどこかのタイミングで生産終了となります。
その予兆となるのがHP掲載から一旦外れる“カタログ落ち”で、弊社はEOLの予兆と考えています。
部品メーカーは近い将来生産を中止したい部品については、自社のホームページやカタログの掲載を停止(カタログ落ち)し、顧客に別の新しい/売りたい部品を選択してもらうよう促します。当社の調べでは、この“カタログ落ち”からおおよそ2年以内に90%以上の部品が生産中止となっています。
“カタログ落ち”情報を抜け漏れ無くタイムリーに入手することによって、以下のようなメリットがあります。
- 近い将来EOLとなる可能性の高い部品の採用を抑制することで、手戻りによる機会損失を防止し、製品寿命も延命できる
- 代替品調査や設計変更、評価などの対策期間も十分確保できる
- 他社に先駆けて部品メーカーへアプローチし、EOL通知に伴う部品の取り合いを避けて必要な部品数を確保できる
まとめ
電子部品のEOL問題に対する対策の一部しかお話しできていませんが、
- 製品に搭載されている全ての電子部品に対し、サプライヤの供給状況を定期に調査し、EOL予備軍を把握する
- EOL予備軍の部品を搭載した製品(設計中製品含)を速やかに抽出し、対策判断をする
- 電子部品の市場トレンドを把握し、関連部門(購買、設計、品管、製造)で部品採用方針を共有して部品標準化を推進
といった施策は、EOL対策に有効な手段では無いでしょうか?
どれもが、地道な作業や検証にはなりますが、継続は力なりです。
皆様は、電子部品のEOL情報をどのように把握し、EOL対策をされていますか?
図研テックでは、電子部品EOLの情報をタイムリーに把握し、事前の対策判断をご支援する『EOL調査サービス』をご提供しています。
ご興味のある方は、以下URLからサービス資料をダウンロードできますので、是非ご覧ください。
図研テックでは経験豊富なエンジニアが電子部品に関する様々なサービスを通じて、多くのお客様の安定的なものづくりに貢献しています。電子部品に関するお困り事がありましたら、何なりとご相談いただければ幸いです。
次回は、電子部品情報を現場の回路設計やEOL対策に活かす、『部品情報整備』についてご紹介します。ご期待ください。ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
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