標準部品データベースの構築とDX
2022.08.03
前回、前々回は、電子部品データベースを管理する視点で、個々の電子部品EOL情報と部品特性情報の整備について解説しました。
今回は電気設計の視点から電子部品の標準化のメリットとその重要性、実行の課題についてお話します。
電気設計現場の課題と部品標準化
電気設計の現場では、次のような電子部品に関わる課題をよく耳にします。
- 多様化する製品設計に伴う電子部品の品番増と管理コストの抑制したい
- 製品ライフサイクルに対応した電子部品の確保したい
- ベテラン設計者の電子部品利用ノウハウ継承や技術を蓄積・活用したい
製品毎に検証された電子部品の利用技術が組織に共有されず、個々の設計者や設計部門に独占されていると、どうしても製品毎に似て非なる部品を採用してしまい、取り扱う電子部品の種類が増える一方となってしまいます。
取り扱う電子部品の種類を無暗に増やさないためには、設計者が一元管理された標準部品DBから、部品を選定できる環境を整備することが不可欠です。
では、標準部品DBとは、どのような状態の“DB”でしょうか?
標準部品DBには、電子部品の形状や特性情報、製造関連情報、調達関連情報、環境対応情報、品質情報が登録されていて、それに加えて、電子部品や自社製品のトレンドなどを考慮した電子部品の推奨定義を行った“DB”です。すなわち、自社製品や電子部品、設計ノウハウなどのデータを最適にデジタル化すること、と言い換えることができます。
標準部品DBを整備・活用するメリット
標準部品DBを整備・活用することによって、次のようなメリットがあります。
- 社内の固有技術やノウハウを蓄積することで技術力の高位平準化ができる。
同時に安定した品質が確保できる。 - 鮮度の高いEOL情報から、電子部品調達による設計変更を回避できる。
- 在庫管理コストと集中購買による部品購入コストが削減できる。
これらのメリットは、冒頭に挙げた電子部品に関わる課題の解決に直結します。また、殊更に電子部品にフォーカスした課題解決だけではなく、電気設計全体に対する技術伝承や組織的なコミュニケーションの促進といった課題解決においても、標準部品DBの構築に取り組む価値があります。
標準部品DBを構築するには?
では、標準部品DBを構築するためには、どのような手順を踏めば良いでしょうか?
お客様が運用中の部品DBの状態によって細かな違いはありますが、一般的には次の5つのステップで進めます。
- 電子部品の標準化戦略を立てる
部品の標準化要件を分析し、部品種毎の標準化効果を検討の上、優先順位と標準化計画を決定し、部品DBの現状分析と標準化戦略を立てます。 - 標準化ルールを決める
形状や特性、在庫、価格、過去の採用実績、トレンド、メーカーなど、標準化の視点となる項目に対し、優先順位に基づいて部品種毎に標準化ルールを策定します。この際、必要に応じて部品分類構成の見直しを併せて実施します。 - 標準化ルールに基づいて部品種毎に標準部品を選定する
標準化計画、標準化ルールに則って、標準部品を選定します。 - 設計者が標準部品DBを活用できる環境を構築する
「3.標準化ルールに基づいて部品種毎に標準部品を選定する」で選定した標準部品を部品DBに登録し、設計者が参照・活用できる環境を構築します。 - 標準部品DBの運用ワークフローを確立する
新規採用する部品に対する標準審査や、定期的なEOL情報の更新を継続するなど、構築した標準部品DBの鮮度を維持するためのワークフローを確立します。
ここまでの5つのステップで特に重要なことは、開発している製品と、それらの製品を開発するために使用している電子部品の特徴を踏まえて、部品標準化の優先順位を明確にすることです。
例えば、
- 製品のライフサイクルが長く、テクノロジの展開要素が高い場合は、ベースモデルから標準化対象を抽出し、EOL対応すべく代替品情報の整備を優先する。
- 大量生産品で使用する部品の場合は、購入部品実績数や金額から共通化の効果が高い部品種の標準化を優先する。
- 不具合が重大な事故に直結するような品質最優先の製品の場合は、故障率、適応規格、信頼性試験結果などの部品情報や製品の市場実績に基づいて標準化を進める。
というように、標準部品DBの構築と運用は、お客様の商品の特徴やビジネスモデルとも密接に関係する取り組みです。
まとめ
標準部品DBの構築と運用は、それ自体に次の3つのメリットがあります。
- 電子部品の管理コストの削減
- 電子部品の調達コストの削減
- 技術伝承の促進、技術力の高位平準化
ここ数年のトレンドワードでもあるDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、ご承知の通り、最適なデジタル化(D)がビジネス創出や変革(X)の礎です。
標準部品DBの構築と運用は、コスト削減や技術伝承といった設計現場の“永遠のテーマ”を解決しながら、最適なデジタル化を進め、ビジネス創出や変革にもつながる取り組みです。
この機会に是非、電子部品の標準化を検討してみてはいかがでしょうか?
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ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
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